2-3『重要なのはカヴァー』


隊員C「やりゃぁがったッ!」

衝突の様子は旧小型トラックからもはっきりと見えていた
指揮車に激突された馬車は少し宙に浮かび、その後に横転
さらに速度の弱まらない指揮車に追突される
そして砂煙を立てながら指揮車によって引きずられ、
両者は衝突地点から数十メートル先でようやく停止した

支援A「ヘイ!ありゃ馬車ん中洗濯機状態じゃねぇかぁ?」

隊員D「中の目標がおっ死んだりしてねぇだろうな…?」

唖然とする一同の元へ、無線通信が入る

補給『ジャンカー4、応答しろ!今の見えてたな!?』

自衛「えぇ、大層派手な演出だ」

補給『こちらは我々で対応する。そちらは予定道理、後方の敵を排除してくれ!』

自衛「了解。聞いたな、後ろにバラついてる連中を黙らせるぞ」

隊列の後方、道の両脇には散会した軽騎兵達の姿があった
正しくは、接近してきた小型トラックや高機動車に対応しようと散会したのだが、
今は皆、馬車に起こった事態に目を奪われていた

自衛「同僚、適当なところで止めろ」

同僚「分かった」

接近する小型トラックに、一番近くにいた一騎の軽騎兵が反応した
そして馬の頭をこちらに向け、迫ってくる

隊員D「来やがった!」

隊員Dは向ってくる軽騎兵へ重機を旋回させ、
押鉄に数回、力を込めた
数発づつ小分けにして打ち出された7.7mm弾は、接近する軽騎兵の周辺に降り注ぐ
そしてその内の数発が軽騎兵に命中
馬、騎手ともに血を噴出し、馬は倒れ、騎手は投げだされた

隊員D「一騎沈黙」

倒れた馬から少し離れたところで、小型トラックは停車した

自衛「よぉし、降車しろ」

停車と同時に隊員D以外の四人は小型トラックから飛び降りる

自衛「同僚は俺と来い。お前等は左っ側だ、行け!」

四人は小型トラックから走る
隊員Cと支援Aは先程倒れた馬の亡骸に身を隠し、
自衛と同僚はそこから少し先にある窪みに隠れた

隊員C「うえッ、クソッタレ!」

支援A「あーぉ!お馬ちゃんッ!」

隊員C等が身を隠した馬の亡骸は血と臓物にまみれ、
二人は渋い表情を浮かべた

自衛「他のが来るぞ!」

しかしそれを気にしている余裕は無かった
後方にはまだ三騎の軽騎兵が展開しており、
その三騎がいずれもバラバラの方向に走り出した

支援A「なんだぁ?」

そしてそれぞれは馬を操り、ジグザグに動きながら接近してきた

同僚「蛇行しながら来るぞ!」

自衛「撃てェ!」

接近する騎兵達に対して、各々は発砲を開始する

隊員C「野郎!」

まず隊員Cが3点制限点射で接近する内の一騎に対して発砲
だが二度、引き金を引くも、命中弾はなかった

隊員C「チョコマカと…!」

同僚「隊員C、危ないぞォ!」

その時、同僚から隊員Cに向けて警告の叫び声が飛んだ

隊員C「あ!?」

隊員Cの視界に一瞬、手を掲げている一騎の騎兵の姿が移る
が、それが何かを考える前に、隊員Cは脊髄反射で身を隠した
そして間を置かず、隊員C達を奇妙な衝撃が襲った

支援A「ウワァオッ!?」

身を隠した馬の亡骸から、何かを叩け付けるような振動がいくつも伝わってくる
そして頭上を複数の何かが掠めていった
衝撃が止み、隊員Cは馬の亡骸の影から頭を出す

隊員C「糞、なんだって……!マジかよ……」

目に入って来たのは、馬の亡骸に突き刺さった、
長さ20cm程の30本近い石の針のような物だった

隊員D「おい、なんだ今のッ!?」

背後から叫び声が聞こえてくる
針は後方の小型トラックにも流れたらしく、
隊員Dは重機の握把を握ったまま、身を低くしている

自衛「敵のファンタジー攻撃だ!気ぃつけろ!」

隊員C「こんなモン、どう気をつけろってんだよ!?」

自衛「奴は攻撃の前に予備動作がある!それを良く見ろ!
    隊員D、重機の援護はいい。お前も身を隠せ!」

隊員D「了解……!」

隊員Dは重機を離れ、小型トラックの後ろへ身を隠した

自衛「同僚、奴を殺る!折り返すタイミングを狙って発砲だ!」

同僚「あぁ……!」

自衛と同僚は銃を構え、魔法攻撃を放って来た騎兵を目で追う

自衛「今だぁ!」

騎兵が蛇行の折り返しに入った瞬間、二人は引き金を引いた
安全装置が単射に合わさった状態で、自衛は三回、同僚は二回発砲
発砲した内の数発が馬を操る騎手に命中し、被弾した騎手は落下した

同僚「一騎排除した」

敵の無力化を確認したその直後
主を失い、うろつく馬の手前を別の騎兵が横切った
騎兵の手にはクロスボウが握られており、
そのクロスボウから、こちらへ向けて矢が放たれた

同僚「いッ!」

矢は窪地の手前に突き刺さった

自衛「おもしろくねぇな」

自衛は銃を構え、矢を放ってきた騎兵を狙おうとする

同僚「ッ!おいあれ!」

だが発砲するより先に、同僚が別の騎兵の動きに気が付く
別の騎兵が視線をこちらへ向け、手を掲げているのが見えた

自衛「隠れろ!」

騎兵の姿を確認した直後、二人は窪地の影へと身を隠す
その直後、頭上を多数の針が機関銃の銃撃のごとく掠めて行った

同僚「糞!複数いるのか……!」

自衛「愉快じゃねぇな、殺るぞ」

魔法攻撃を放ってきた騎兵は、折り返し行動に入ろうとしている
二人はその騎兵に向けて銃口を向ける
が、発砲する前に騎兵は血を噴出した

支援A「おーら!ゲボ吐き戻すまで食いやがれェ!フィーッ!」

騎兵を襲ったのは、支援Aの軽機から放たれた銃弾だった

自衛「あいつか」

銃撃を受けた馬は転倒し、投げ出された騎手は
運の悪いことに、その先にあったむき出しの岩に頭部を強打し、絶命した

同僚「見たか、岩場に顔から行きやがった!」

自衛「ああ、今度は愉快だな」

残るは、先程クロスボウを放ってきた騎兵一騎となった
魔法を使える騎兵が二騎ともやられた事で形勢不利と感じたのか、
残った騎兵は馬を方向転換させ、逃走しようとしていた

同僚「見ろ、逃げるぞ」

自衛「そうは行くかよ」

自衛と同僚は、逃げる騎兵に向けて数発発砲
弾は馬と騎手の両方に命中し、馬は倒れ騎手は投げ出された

自衛「片付いたな」

最後の一騎が沈黙し、自衛達の眼の前に動くものは無くなった

隊員C「どうかしてるぜ!嫌になるね本当によぉ!」

自衛は喚き声を上げるている隊員Cは無視して、
窪地の手前に目を落とす

自衛「こいつぁなんだ?」

そこに大量に突き刺さった石の針を、
一本抜き取っていぶかしげに眺めた

同僚「五森の公国の砦で、同じ魔法を使う人間を見た。
    その時は氷の針だったが……これは、鉱石みたいだな……」

自衛「アップグレードヴァージョンか」

鼻で笑うように言いながら、鉱石の針を放り投げた

自衛「まぁ、考察は後だ。隊員C、隊員D、支援A、お前等は先に第一分隊と合流しろ。
   同僚と俺は死亡確認してから追っかける」



商会騎兵C「ぐ…、こんな事が…」

苦しそうな声で言いながら、一人の軽装兵が地面を這いずり進んでいる
最後に倒れた、クロスボウを装備していた軽騎兵だ
彼の視線の先には、主を失いうろついている馬の姿があった

商会騎兵C「知らせなければ…」

露草の町に戻り、この事態を伝えなければならない
そう思いながら、彼は目の前の馬に必死で這いより近づく

商会騎兵C「あと……少、ゴフッ!?」

だが突如、彼の体を鈍い衝撃が襲った
横腹に加えられた衝撃に、彼の体は強引に仰向けにされる

商会騎兵C「うぐぁ……一体な……ッ!?」

仰向けにされた彼の目に飛び込んで来たのは
非常におぞましい、すでに奇形と呼んでもいい顔の人物だった



自衛は死亡確認のために窪地を飛び出し、
すぐにまだ生存している商会騎兵Cを発見
商会騎兵Cに接近し、その体を足で強引に仰向けにさせ、彼の体を跨いだ

自衛「よぉ」

商会騎兵C「ひッ!?な……ゲギッ!?」

自衛は商会騎兵Cが何かを言う前に、彼の顔面に拳を一発叩き込んだ

商会騎兵C「ギボッ!?ギャッ!?」

さらに二発、三発と間髪いれずに顔面に叩き込んでゆく
抵抗が無くなった所で自衛は右手で顔面を、左手で首を掴んだ
首をがっしりと掴んで固定したまま、右手に力を込め、
商会騎兵Cの顔を思いっきり横に捻った

商会騎兵C「こッ……!」

首の肉の内側で骨が捻り折れる音とともに、
商会騎兵Cの口から悲鳴となるはずだった音が出る
頭が向いてはいけない方向を向いた状態で、首元に血が滲み出し
商会騎兵Cは息絶えた

同僚「おい、こっちは大丈夫……ッ!お前なぁ……」

自衛の元に、他の騎兵の死亡確認を終えた同僚が追いつく
そして眼の前の凄惨な光景と、自衛の行いを目にして
彼女は苦々しい表情を浮かべていた

自衛「お前の意見は後で聞く。あっちと合流するぞ」

同僚「……ハァ、分かったよ……」

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